ギタリストはこれを聴け!ブルースギター界の3人のキングたち
ブルースは現代音楽において最も影響力のあるジャンルのひとつであり、ロック、ジャズ、ソウル、さらにはポップスにまでその足跡を残している。このジャンルで最も影響力のある人物の中に、しばしば「ブルースの3人のキング」と呼ばれる3人のギタリストがいる: B.B.キング、アルバート・キング、そしてフレディ・キングだ。これらの伝説的ミュージシャンたちは、それぞれ独自のスタイルと視点をブルース・ギター演奏に持ち込み、20世紀以降のブルース・サウンドの形成に貢献した。彼らの演奏スタイル、楽器の選択、そして象徴的なレコーディングは音楽界に忘れがたい足跡を残し、数え切れない世代のミュージシャンたちにインスピレーションを与えてきた。
この記事では、この3人のブルース界の巨人の遺産を深く掘り下げ、彼らの個性的な演奏スタイル、使用した楽器や機材、そして音楽史における彼らの地位を確固たるものにした最も象徴的なレコーディングを探っていこう。
B.B.キング ブルースの帝王
演奏スタイル
B.B.キングとして知られるライリー・B.キングは、おそらく3人のキングの中で最も有名な人物だろう。彼のプレイ・スタイルは、表現力豊かなビブラートと、選び抜かれたわずかな音で深い感情を伝える独特の能力で特徴的だった。キングは速弾きでも派手な奏者でもなかったが、そうである必要はなかった。彼のミニマルなアプローチは、音楽を通して物語を語る能力に完璧に適していたのだ。
B.B.キングの特徴的なギター奏法は、人間の声を模した弦のベンドとビブラートだった。彼はしばしば、自分のギターを「歌わせる」ことを試みていると語っていたが、この目標は彼の演奏に顕著に表れている。他の多くのブルース・ギタリストとは異なり、キングはコードをほとんど弾かなかった。その代わり、彼は正確さとフィーリング、音色とタイミングを重視して弾く単音ランに頼っていた。彼の演奏はメロディと感情に関するものであり、ギターを通して感情を表現する能力は、彼が崇拝された多くの理由のひとつである。
キングの即興能力もまた、彼の演奏の重要な要素だった。彼はしばしば、シンプルだが深く感情的なソロを弾き、演奏に空間を多用した。彼のスタイルは音符と音符の間の沈黙を重要視し、彼の音楽に内省的で思慮深い質を与えていた。
楽器とギア
B.B.キングのシグネチャー・ギターである 「ルシール」は、間違いなくブルース史上最も有名なギターのひとつ。「ルシール」とは、キングがそのキャリアを通じて使用したギブソンES-355のシリーズを指す。1950年代の演奏中、キングが演奏していたクラブで火災が発生。慌てて逃げようとしたキングは、ギターを店内に置き忘れました。火災の原因がルシールという女性をめぐる争いであることを知ったキングは、ギターを救うために燃え盛る建物に戻った。それ以来、彼が弾くギターはすべて 「ルシール 」と名付けられた。
ギブソンES-355はセミホロウ・ボディのエレキギターで、滑らかで温かみのあるトーンで知られ、キングのスタイルにぴったりだった。B.B.キングはしばしばライト・ゲージの弦を使用し、弦のベンディングやビブラートのテクニックを容易にしたことが彼のシグネチャー・サウンドの一因となった。
また、キングはソリッドステート・アンプ、特にLab Series L5アンプを好んで使用していた。このアンプは、キングの演奏の代名詞となったクリーンでウォームなトーンを生み出すのに役立った。彼のセットアップはストレートでシンプルで、技術的な複雑さよりもトーンと感情に常に重点を置いていた。
象徴的なレコーディング
B.B.キングのディスコグラフィーは膨大だが、彼のキャリアの決定的瞬間として際立っている曲がいくつかある。おそらく彼の最も有名なレコーディングは、1969年にリリースされた「The Thrill is Gone」だろう。この曲は大ヒットとなり、キングをより幅広い聴衆に紹介し、ブルースをよりモダンなサウンドと融合させる彼の能力を示した。この曲のストリングス・アレンジは、キングのブルースに新たな次元を加え、時代を超越しながらも現代的なものにしている。
他にも、彼の愛用ギターに捧げた「Lucille」や、彼の代表曲のひとつとなった「Every Day I Have the Blues」など、キングを象徴するレコーディングがある。キングのライブ・パフォーマンス、特に1965年のアルバム『Live at the Regal』は、史上最高のブルース・ライブ録音としても高く評価されている。
アルバート・キング:ワン・ノート・パンチの達人
演奏スタイル
アルバート・キングは、生々しくエモーショナルなギター・プレイ・スタイルで知られていた。正確で優雅な演奏をしたB.B.キングとは異なり、アルバート・キングの演奏はより力強く攻撃的だった。彼のスタイルは単音のチョーキングに重きを置いており、しばしばゆっくりと引き伸ばすようなチョーキングを弾き、それが爆発的にパワフルなリリックになることもあった。このアプローチは、彼の演奏に劇的でソウルフルな質を与え、一音一音に重要性を感じさせた。
アルバート・キングの演奏の重要な要素のひとつは、その異端的なテクニックだった。キングは左利きであったが、右利きのギターを逆さまにして弾いた。そのため、彼の弦の曲げ方は特に独特で、低音弦を下方ではなく上方に曲げることで、彼の特徴である独特のサウンドを生み出していた。
アルバート・キングはまた、ミニマルなアプローチを用い、少ない音符に集中しながらも、ひとつひとつの音符を大切にした。彼のソロはしばしばゆっくりとしたもので、一音一音の感情を共鳴させるものだった。彼はパワフルな一音パンチで知られ、一つの音を長く持続させ、フレーズを解決する前に劇的な緊張感を作り出す。
楽器とギア
アルバート・キングが選んだギターはギブソン・フライングVで、「ルーシー 」という愛称で呼ばれていた。矢のような形が特徴的なフライングVは、ブルース・ギタリストの間では一般的な選択ではなかったが、キングはこのギターを自分のものにした。このギターの特異なシェイプとバランスは、キングの逆さまの演奏スタイルに合っており、彼の特徴であるチョーキングを簡単に行うことができた。
キングはまた、ソリッド・ボディのギターを好んで使用し、彼の演奏により攻撃的なトーンを与えた。彼は太いゲージの弦を使用し、それが彼の演奏を特徴づけるパワフルでパンチのあるサウンドに貢献していた。彼のアンプ・セットアップにはアコースティック・アンプがよく使われ、ラウドでクリアなトーンが彼の威厳あるプレイ・スタイルに適していた。
象徴的な録音
アルバート・キングの最も有名なレコーディングは、間違いなく1967年のアルバムのタイトル曲「Born Under a Bad Sign」だ。この曲はブルースのスタンダードとなり、クリームをはじめ数え切れないほどのアーティストにカヴァーされている。「Born Under a Bad Sign」というタイトルでも知られるこのアルバムは、史上最高のブルース・アルバムのひとつとされ、キングの生々しくエモーショナルな演奏が最大限に発揮されている。
その他の代表曲には、伝統的なブルース・ソングをリメイクし、キングの最も人気のあるレコーディングのひとつとなった「Crosscut Saw」や、演奏を通して深い感情を伝える彼の能力を際立たせた「As the Years Go Passing By」などがある。
フレディ・キング:テキサス・キャノンボール
演奏スタイル
しばしば 「テキサス・キャノンボール 」と呼ばれるフレディ・キングは、ブルース・ギター演奏に爆発的なエネルギーをもたらした。彼は伝統的なブルース・サウンドにロックンロールの要素を融合させ、よりアグレッシブでテンポの速いスタイルを生み出し、後に多くのロック・ギタリストに影響を与えた。キングの演奏は親指弾きとフィンガースタイル・テクニックの使用が特徴的で、これにより彼のトレードマークのひとつとなった急速で複雑なランを演奏することが可能になった。
フレディ・キングのスタイルはテキサス・ブルースの伝統に深く根ざしていたが、シカゴ・ブルースからも多大な影響を受けていた。彼はこの2つのスタイルを融合させることに長けており、パワフルでありながらニュアンスのあるサウンドを生み出した。彼の演奏の特徴は、速くて刺すようなギター・リック、ダブル・ストップの多用、そして他のブルース・プレイヤーとは一線を画すリズムの激しさだった。
キングはまた、メジャー・ペンタトニックとマイナー・ペンタトニックのスケールを流動的に行き来する能力でも知られ、彼のソロによりダイナミックで予測不可能なクオリティを与えていた。彼の速くてアグレッシブなスタイルは、ブルース・フレージングの熟練と相まって、当時最も影響力のあったブルース・ギタリストのひとりとなった。
楽器とギア
フレディ・キングは主にギブソンのギターを弾いており、彼の最も有名なギターはギブソンES-335だった。B.B.キングやアルバート・キングと同様、フレディはその温かみのあるトーンと汎用性の高さからセミホロウ・ボディのギターを好んだ。彼のギターの選択は、彼のシグネチャーとなった滑らかでありながら噛みしめるようなトーンを実現するのに役立った。
アンプに関しては、キングはフェンダー・アンプ、特にフェンダー・ツイン・リヴァーブを使っていた。このアンプは、クリアでパンチのあるサウンドと余裕のあるヘッドルームを実現し、彼のハイエナジーなプレイに理想的だった。また、キングは親指と人差し指に金属製のフィンガー・ピックを使用することでも知られており、これが彼のシャープでパーカッシブなアタックに貢献していた。
象徴的なレコーディング
フレディ・キングの最も象徴的なレコーディングは、1961年にヒットし、以来ブルースのスタンダードとなったインストゥルメンタル曲、「Hide Away」であることは間違いない。この曲の伝染するようなメロディーとテンポの速いリズムは、キングの技術的な才能と、記憶に残るキャッチーな曲を作る能力を示している。「Hide Away」は多くのアーティストにカバーされ、ブルースの歴史におけるその地位をさらに確固たるものにしている。
その他の代表曲には、キングの激しさと繊細さを併せ持つ演奏能力を際立たせたスローでエモーショナルなブルース「Have You Ever Loved a Woman」や、ドライヴ感のあるリズムとパワフルなリフでロック・ミュージシャンの間で人気となった「Going Down」などがある。
真のキングとは誰か?
ブルースの3人のキング、B.B.キング、アルバート・キング、そしてフレディ・キングは、それぞれがブルースというジャンルにユニークなものをもたらした。B.B.キングのソウルフルなビブラート、アルバート・キングのパワフルなベンド、そしてフレディ・キングの爆発的なエネルギーは、現代のブルース・ギター・プレイの形成に貢献し、様々なジャンルのミュージシャンの世代に影響を与えた。彼らの独特な演奏スタイル、楽器の選択、そして象徴的なレコーディングは、聴衆とミュージシャンの共感を呼び続け、ブルースの真の伝説としての地位を確かなものにしている。「キング・オブ・ザ・ブルース」は、ブルースというジャンルを形作っただけでなく、未来のブルース・ギタリストやロック・ギタリストのための基礎を築き、今日も変わらず力強い遺産を残している。
-Ryan