ベスト・バジェット・ギア
楽器の世界には「バジェット(低価格)」機材の市場が非常に大きく存在しています。むしろ、全体のシェアの大部分はバジェット機材に割かれているのではないか、とすら思います。価格の安い機材を使うことに関しては賛否両論がありますが、今回はそうした議論には触れません。この記事では、あくまで「おすすめしたい手頃な機材」をいくつか紹介します。カテゴリーは大きく分けて3つ ― エフェクト、アンプシミュレーター、そして両方を兼ね備えたマルチエフェクトです。
「バジェット」とは?
まず最初に、この記事における「バジェット機材」の定義を私なりに説明しておきます。ここでいう「バジェット」とは、同メーカーや他社のフラッグシップ製品に比べて価格が低いが、それでも十分に仕事をこなせる製品を指します。もちろん、人によって使える予算は違いますので、「バジェット」という言葉は相対的かつ主観的なものだと考えています。
注意点
過去のブログ記事で「高価な機材」と「安価な機材」の是非について詳しく書いたことがありますので、そちらもぜひご覧ください。ここではいくつかの注意点だけ挙げておきます。
- 単に一番安いものを選ばないこと
安い理由が必ずあるからです。もちろん値段を比較して選ぶのは大事ですが、安価すぎる機材は長期的に見ればかえって高くつくこともあります。たとえば、ある有名ブランドのエフェクターは安価で人気ですが、スイッチ部分が壊れやすく、肝心な場面で故障したという話を友人からよく聞きます。 - 倫理的な側面も考慮すること
世界的な大手メーカーの中には、他社の回路やデザインを露骨にコピーして激安で販売し、業界を荒らすようなやり方をしている会社もあります。そうした企業を応援したくないという人も多いでしょう(とはいえ、選択肢が限られている人もいます)。
エフェクト
昔の名機をおすすめしたいところですが、電源規格が特殊だったりすでに生産終了していたりするため、入手困難で中古価格も非常に高額です。そこで、私のおすすめは Zoom MS-70CDR です。
この小さなペダルは複数のエフェクトを同時に使用でき、USB接続でパッチ編集も可能。有名なギタリストも使っている優秀な1台です。

価格はおよそ15,000円。Strymon製品と比べると音質や細かい音作りの自由度は劣りますが、アンビエント系のサウンドを探しているならコストパフォーマンスは抜群です。
アンプシミュレーター
すでにエフェクトを持っている人や、ライブでメイン機材が壊れた時のバックアップを探している人には IK Multimedia Tone X One をおすすめします。
価格は32,000円程度と「格安」とは言えませんが、マイクロサイズのペダルなのでポケットに入るほど小型。IK MultimediaのTone Xシリーズは常にアップデートされており、モデリング界隈の大手製品と比べても十分通用します。

私の友人は、このペダルだけを使ってツアー2本と大型フェス「Bloodstock Open Air」に出演しました。しかも相当大きなプロダクションで!
新しいKemper Profiler Player 1台の価格で、このTone X Oneを5台近く買えることを考えると、最強のバジェット・アンプシミュレーターだと思います。
マルチエフェクト + アンプシミュレーション
これは少し悩ましいカテゴリーです。私は過去に Line 6 HX Stomp を使っており、現在は Kemper Profiler Player を使っていますが、どちらも安くはありません。
Valeton GP5 のようにTone X Oneサイズでエフェクトもアンプも全部入りという機種もありますが、音色切り替えが面倒で耐久性も心配。
そこでおすすめしたいのは Mooer GE200 です。
この機材はサウンドがしっかりしており、3つのフットスイッチである程度快適に操作できます。エクスプレッションペダルも内蔵されていて割り当て自由。エフェクトもアンプ音も良く、UI(操作性)も十分 ― 高価な機材でもここが弱点になることが多いので、これは大きな強みです。

価格は35,000~40,000円ほど。これ1台でリグ全体をまかなう人もおり、セッティングも撤収も簡単。安価なので予備機を常備している人も多いです。初心者の最初の1台や、既存リグのバックアップとして使うのが一般的です。
まとめ
どんな理由でバジェット機材を買うにしても、できることなら購入前に一度試すのがおすすめです。世の中には本当に膨大な種類の機材があります。まず自分の用途や条件を整理し、その上でリサーチを始めましょう。
また、インフルエンサーの意見に縛られすぎず、柔軟に選ぶことも大切です。そして、価格に関わらず、自分の機材を徹底的に理解し使いこなすことが何より大事です。たとえバジェット機材でも、工夫次第で驚くほどの力を発揮します。ぜひ、The American Guitar Academy の先生に相談してみてください。

