自作バッキングトラックのすすめ
先日公開したブログ記事では、自宅での簡単なレコーディング環境を使って、自分のバッキングトラックを録音する方法についてお話しました。今回はその内容をさらに掘り下げて、いくつかのポイントやおすすめの方法、さまざまなアプローチをご紹介します。
なお、今回は録音や編集といった技術的な部分は取り扱いません。「どうやるか」ではなく、「どんなものを作るか」に焦点を当てていきます。
楽器について
ギターとベース
先日の記事を読んで、必要な機材を一通りそろえていただけたことと思います。まず、当然ですがギターと、アンプもしくはアンプシミュレーターが必要です。ギターの録音は比較的簡単なので、細かい方法は割愛します。うまく録れる自信がない場合は、DAWやオーディオインターフェースのマニュアルやフォーラムをチェックしてみてください。
ベースについては2つの選択肢があります。ひとつは、実際のベースを使い、フリープラグインのベース用プリアンプを使用する方法。これが一番良い音になると思います。ベースギターがない場合は、エレキギターを使って録音し、1オクターブ下げるという方法もあります。ほとんどのDAWにはピッチシフトのプラグインが標準搭載されています。音質は完璧ではありませんが、十分実用的です。
ドラム
どれくらい本格的なトラックを作るかによって、ドラムを入れるかどうかが変わってきます。MIDIソフトを使っている場合は、プリセットのループやMIDIキーボードでリズムを入力することができます。
また、オーディオファイル形式のドラムループをダウンロードまたは購入する方法もありますが、自分の好みに合わせて編集しにくいという制約があります。
キーボード・その他のバーチャル楽器
無料で使える高品質なバーチャル楽器は、今では本当にたくさんあります。前回のブログ記事で私のおすすめも紹介しましたが、ぜひご自身でも調べてみてください。
バーチャル楽器を使えば、普段ではなかなか取り入れられない音も簡単に使えます。例えば、ソロバイオリンやストリングスアンサンブル、シンセやオルガン、ブラスなども可能です。
プロジェクトの整理方法
トラックをどの順番で作っても問題ありませんが、最終的に以下のような順序でトラックを並べておくと作業がしやすくなります。私は各トラックを色分けして見やすくしています(これはお好みで!)。
- ドラム
- パーカッション(使う場合)
- ベース(または代用の音)
- キーボード
- ギター
- ストリングス
- その他
トラックがきちんと整理されていると、視覚的にもスッキリして、作業の集中力が高まります。再生中に気になる音があった場合も、すぐに見つけられて便利です。
バッキングトラックの種類
練習のためにバッキングトラックを作るとしても、さまざまな種類があります。それぞれのケースについて見ていきましょう。
カバー曲
古い楽曲には、A=440Hzとは少し違ったチューニングで録音されているものがあります。バンドの演奏自体は正確でも、現代のチューニングと合わせると微妙にズレてしまい、違和感を覚えることがあります。
このような場合は、自分でバッキングトラックを作ってしまう方がいいかもしれません。運が良ければ、オリジナル音源のステムデータやMIDIファイル(特にドラムやキーボード)を見つけることができるかもしれません。カラオケ音源を自作する人もよくこの方法を使っています。
練習用のシンプルなトラック
特定のスケールやフレーズ、テクニックを特定のコード進行上で練習したいとき、既存のバッキングトラックが見つからないことがあります。その場合は、自作するのが一番早いです。ギターだけを録音するなど、シンプルな構成で構いません。
私自身、ジャムセッションのような形式の練習用トラックを生徒のために作成したことがあります。例えば、前半はリードギターなし、後半はリズムギターなしにして、それぞれのパートを交互に練習できるようにするのです。私自身も楽しめる内容でした!
バンドメンバーのために
オリジナル曲を作っていて、バンドメンバーに練習素材を提供したいとき、それぞれのパートを抜いたバージョンを作ってあげると、とても親切です。1つのプロジェクトから、異なるバージョンをエクスポートするだけで対応できます。
音をよくするためのコツ
私はサウンドエンジニアではありませんし、ミキシングやマスタリングの専門的な知識もありませんが、いくつか覚えておくと役立つポイントをご紹介します。
まずは、EQやコンプレッサーのプリセットを使うことをおすすめします。多くのプラグインにプリセットが入っていて、これを使うだけでだいぶ音が整います。
それから、音量バランスもとても重要です。ライブ現場での経験から学んだ方法ですが、すべてのトラックの音量を一度ゼロにしてから、まずはドラムの音量を決め、そこから順番に他のパートを加えていく方法が効果的です。レベルがクリップしないように(メーターが赤くなりっぱなしにならないように)注意しましょう。
身につくその他のスキル
このプロセスを通して、通常のギターレッスンではあまり取り扱わないようなスキルも身につきます。
トーンメイキング
一人でギターを弾くときは、どうしても「太くて大きな音」を目指しがちですが、他の楽器と合わせた時にその音がうまく馴染まないことがあります。自作のバッキングトラックを使えば、音作りの微調整をしながら、より良い結果を追求することができます。
タイムマネジメント
自分のペースで作業すると、つい脱線してしまいがちですが、他のバンドメンバーのためにも作っていると思えば、ある程度効率よく作業ができるかもしれません(…たぶん)。
YouTuberのBradley Hallは、「5分でポップソングを作る」というシリーズで冗談まじりの即興ソングを披露していますが、実際にはなかなか完成度が高く、「時間をかければいい」というものでもないという良い例です。
アレンジ能力
バッキングトラックを作る際は、多少なりともアレンジの力が求められます。これはプロの音楽家にとっては、新たな収入源になる可能性もあります。例えば、Taylor Swiftの曲をレゲエ風にアレンジして、メロディをギターで弾くような作品を作るのもアリです。アイデアは無限です!
まとめ
こうした音楽制作の方法に興味がない人もいるかもしれませんが、実はとても有効な練習手段になります。最初は、機材やソフトを買い揃える前に、音楽仲間と一緒に試してみるのがおすすめです。
また、ソングライティングの観点からも、自作トラックは有効です。いいメロディやコード進行を思いついたとき、スマホの録音だけでは不十分に感じることもありますよね? 記憶だけに頼るのではなく、形に残しておくことが大切です。
アメリカン・ギター・アカデミーの講師陣は、こういった経験を少なからず持っています。質問があれば、ぜひ気軽に聞いてみてください!